2025年4月の建築基準法改正でどう変わる?
2025/04/20 | TOPICSこんにちは、いなほ工務店です。
突然ですが、弊社は新築をご紹介させていただく機会の方が多いため、リフォームには対応していますか?とお聞きいただくことがよくあります。
情報発信の方法を考えなくてはいけないなと思っていたところ、ついに建築基準法の改正が施行されました。
2025年4月より新しくなった建築基準法は、私たちの暮らしととても身近な内容、特にリフォームについて大きな変更がありましたので、今回のコラムで詳しくお伝えさせていただきます。
そもそも建築基準法って何?
建築基準法とは、日本国内で建築物を建築する際に設けられている、建物の敷地や構造、設備、用途に関する最低限の基準を定めた法律です。
建築物の安全性を確保し、国民の生命や健康、財産を守ることを目的として定められています。
具体的には、地震や台風といった自然災害や、火災などの災害時において、建物が崩壊したり、人に危険が及ぼないようにするために、建物の構造や材料の規定を定めた法律です。
その他にも、都市の景観や都市計画、環境負荷の軽減といった生活環境の向上を目的とした基準も含まれています。
建築基準法の改正は何故あるの?
建築基準法は、1950年に初めて施工されました。
1950年はというと戦後5年、日本が戦後復興の途上真っただ中のタイミングです。
戦後復興の流れの中で、急激な都市化と人工の増加に伴い、無秩序に建築される建物の安全性が懸念されたことから、法律が制定され、耐震性や防火性に関する基準が整備されることとなりました。
この施行によって、建物の安全性が向上されることとなるのですが・・・。
先にも記載した通り、建築基準法は、災害の際に建物が人に危険を及ぼさないよう定められているという当初の目的があるため、地震や災害が発生するたびに反省を生かして改正されるのです。
日本の建築物が世界有数の耐震性能を持っているのも、常にアップデートを怠らず法改正を続けてきた故です。
その他にも、社会環境の変化や時代の流れに応じて建築基準法は改良を重ねています。
今回の改正は、こちらに当たります。
2025年4月に施行される建築基準法の改正って?
2025年4月に改正された建築基準法と建築物省エネ法の改正は、脱炭素社会への実現に向けたものになります。
実は、今回の法改正は、2022年6月に制定された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」に基づいています。
とても長く分かりにくいのですが簡単に言うと、環境負荷を減らすための目標数値が、建築基準法にも反映されたということです。
2025年4月に改正された建築基準法の重要なポイント
今回改正された建築基準法は、阪神淡路大震災や、東日本大震災の後に改正されたような、より安全性を高めることを目的としたものではなく、省エネ促進や木材の利用の拡大を目的としています。
今回の改正では、全ての新築住宅に省エネ基準が適用されることや、中規模以上の木造建築物の構造計算基準変更、大規模木造建築物の防火規定緩和など、多くの点で建築基準が見直されます。
弊社は、住宅をメインに施工させていただいている工務店のため、ご覧いただいている方が必要とする情報、新築住宅と住宅リフォームに関する改正ポイントを詳しくお伝えさせていただきます。
1:4号特例の縮小
今回の改正で一番注目されていると言っても過言では無いのが「4号特例」の縮小です。
今回の改正まで、「2階建て以下」、「延べ床面積が500㎡以下の木造住宅」など、一定の条件をクリアした建物は、建築確認申請の際に、構造に関する審査が省略されていました。
分かりやすく言うと、今回改正されるまでは、2階建てで500㎡以下の木造住宅なら、構造計算所の提出がいらなかったということです。
もちろん、4号特例があっても弊社のように全棟構造計算は安全のために必須!という会社も中にはありましたが、構造計算をしなくても良いということは、その分作業の手間も時間も減るということですから、建築業者、お客さん双方にメリットがありました。
しかし、手間が減るメリットの一方で、耐震性や安全性が十分に確保されないまま、建築されるケースがあったのも事実です。
建築基準法が安全を目的として定められている以上、あってはいけないことであり、業者に一任されているのはやはり不自然だったと言えるのではないでしょうか。
※弊社が義務以前に行い続けてきた構造計算について詳しくはこちらをご覧ください。
2:4号特例縮小で新築の住宅建築はどうなる?
4号特例の縮小は、住宅価格の値上がりに直結していると言われています。
理由は、今まで必要のなかった審査に必要な提出図書(構造計算書及びその他)の作成に時間が必要になる上、審査項目が増え、確認や申請などの手続きに時間がかかることから、作業が増え、工期が伸びるためです。
しかし、その反面住宅性能の安全性が向上するという大きなメリットがあります。
今までは構造計算が必須ではなかったため、構造計算が行われていない住宅が多くありました。
3階建て又は、500㎡以上でない限り必要ないのですから当然ですよね。
しかし今回の4号特例縮小により、構造計算が必須となり耐震性能の向上や安全性が高まることが考えられます。
安心して住める家は、何物にも代えがたいメリットではないでしょうか。
3:4号特例縮小でリフォームはどうなる?
4号特例縮小により、リフォームには大きなデメリットとメリットが生まれました。
次は、リフォームのデメリットとメリットを順にお伝えいたします。
4号特例縮小で発生するリフォームのデメリット
4号特例縮小でリフォームの中でも、「大規模な修繕・模様替えを行う場合」は、確認申請が必要になりました。
大規模な修繕や模様替えとは、壁や柱床や梁、屋根または階段の1種以上を過半(1/2超)にわたり修繕・模様替えすることを指します。
細かな規定は各自治体によって異なるため、どの部分が対象となるかは明確にお伝えししづらいのですが、例えば間取りの変更(例:隣り合わせの部屋の間の壁を取り除く)といったリフォームにも構造計算が必要になると考えられます。
その為、改正前までは必要なかった構造計算が必要となり、単純に業者の作業量が増えてしまいます。
一般的に、構造計算を行うと30万~50万程度の費用が掛かると言われており、改正前と比較して予算が大幅に増えることが予想されています。
4号特例縮小で発生するリフォームのメリット
メリットは、3つありますので、順にお伝えいたしますね。
1:業者を見極めやすくなる
建築基準法改正前のリフォーム業界は、確認申請も構造計算も必要ないため、新築よりも圧倒的に参入しやすい業界でした。
その為、リフォーム業者の見極めが非常に難しく、不本意な工事になってしまったというニュースを目にしたこともある方は多いのではないでしょうか。
ですが今回、4号特例が縮小されたことで、建築士が在席しているか否かが1つの見極め要素となってきます。
それは、確認申請が必要なリフォームでは、建築士が必ず必要となるからです。
弊社のように、社内に建築士が在籍しており、確認申請も構造計算も通常業務として行っている工務店なら、確認申請や構造計算を求められても問題はありません。
しかし、今まで建築士がおらず建築士に外注することも無かったリフォーム業者にとっては、事業継続のために次のいずれかの選択を求められることになります。
- 確認申請が必要なリフォームを受注しない
- 建築士を雇って建築事務所登録する
- 建築士に設計を外注する
リフォーム業者の立場に立った時、上2つは現実的ではありません。
その為、建築基準法改正への対応を行うリフォーム業者は、建築士に設計を「外注する」という選択をすることになるため、建築士の在り方が見極めの要素として使えるのです。
2:法律に準拠したリフォームがうけられる
法改正以前は、法律に準拠したリフォームでも審査が無いため、正しく施工されているか否かは業者の倫理観や常識に委ねられていました。
住宅というとても大切なものを任せるにはとても不安の大きな状態だったと言えます。
改正後は、今まで業者に委ねられたリフォームが、正しく審査されるようになったことで適当な工事が減ることが予想されています。
この点こそ、今回の法改正の一番のメリットだと言えます。
3:補助金が使用できる場合も
2025年4月の建築基準法改正では、省エネ基準適合義務化がスタートすることにより、大規模リフォーム後の建物には高い断熱性能を持つことが義務化されます。
高い断熱性能は、光熱費が大幅に削減されるメリットがあるのは勿論、省エネ性能を高めるリフォームには国や地方自治体から補助金が支給される制度があります。
補助金は毎年内容が変わる上、対象かどうかの判断が少し難しいのですが、慣れている会社さんなら何も問題ありません。
補助金で増えたコストを賄いつつ、心地よく暮らせる住まいに大規模リフォームできるのは大きなメリットなので、大規模リフォームをご検討中の方はお問い合わせの際に、補助金の利用がどうかもお聞きされるのも忘れないようにしてくださいね。
まとめ
今回のコラムでは、建築基準法の改正の中でも、4号特例の縮小についてお伝えさせていただきました。
弊社は改正以前より、全棟構造計算を必須としていたため、新築においてはさほど大きな変化はありません。
これからも、安心して暮らせる家は、安全であるからこそという代表本の考えの下、安全を第一にお家を建てさせていただくだけですから。
ですが、リフォームはそうはいきません。
今までは必要のなかった審査の時間が増えるからです。
審査の申請や順番待ちなど、今までは存在しなかった対応が必要になる以上、今までと同じ流れ、時間でリフォームが完了することはありません。
その為、リフォームの内容によってはすぐに対応させていただくことが難しくなります。
新築と比べて、簡単にできるイメージのリフォームですが、これからは時間がかかるものもあるということを念頭に置いて、気になる個所があれば先に相談してみるという意識を持っておいてくださいね。