フローリングのワックスをどうすべきか
2021/05/19 | お家のこと先日、モデルハウスの見学に来られた方に、「フローリングがきれいですね、ワックスは何を使用していますか?」と質問いただきました。
フローリングにワックス・・・よく考えるとなかなか悩む質問だなと思いました。
という事で、今回はなぜ悩んだのかと共に、フローリングの考え方。及び、ワックスはどうすべきか。弊社の考えをお伝えしたいと思います。
※弊社モデルハウス「伊丹市桑津 無垢の木の家 重層の甍」リビングフローリング
1:なぜ悩む?
悩んだ理由には2つあります、その内の1つは、弊社は基本的に無垢材のフローリングには、基本的にワックスを使用していないからです。
無垢材のフローリングは、木その物の調湿効果を損なわない為弊社では無垢材フローリングにワックスを使用していません。 何も塗っていな、無垢そのものです。
だからお尋ね頂いても「商品名」をお答えできないのです。
ワックスを塗らない理由は無垢材が持つ調湿効果を損なうから。
『えっ!?』ってなりませんか?
無垢材用のワックスはよく販売されていますよね。
天然素材を使用した体にやさしいワックスの数々。
確かに体にやさしいのは事実ですが、ワックスは無垢材の表面に膜を作る役目をするため、調湿効果を損なってしまいますが、逆に汚れやシミを防いでくれるメリットもあります。
ワックスを塗りたい場合は、柿渋や米ぬか等の自然素材がおススメです。
自然素材と謳っていても、ちゃんと成分を確認してから選んでくださいね。
2:悩む理由は無垢材フローリングの種類にあった?
フローリングの種類は大きく分けて3種類あるのはご存じでしょうか。
- ①一般的によく使われている合板フローリング
- ②ワックスやオイル塗装された無垢のフローリング
- ③何も加工されていない無垢のフローリング
①のフローリングは、よくある木目がプリントされたフローリングです。
表面に色や木目がデザインされた薄い板が貼り付けられています。
ワックスがけが推奨されており、よくあるワックスの説明書きには半年に1回がおススメとされています。
が、そのお手入れ方法の手間を考えるとほとんどの方が何もされていないのではないかと思います。
※市販のフローリングワックス
次に②の無垢フローリングです。
弊社でも水をよく使用する箇所では使用します。
この無垢フローリングは自然素材やオイル系の塗装・ウレタン系の塗装等、何種類かに分かれます。 例えばオイル塗装された無垢フローリングの場合、下記の手順でお手入れが必要です。
1.床のゴミを綺麗に取り除く。
2.床のベタつきを除去ししっかりとからぶきする
3.オイルを木材に塗り込む。
又、ウレタン系の塗装されたフローリングはキズやシミがつかない様に向いた塗装の為、調湿効果は全く期待できません。
家具や水回りに適した塗装となります。
無垢材フローリングの定義は一枚の板で構成されていることを言うため、無垢材に何らかの塗装がされていても無垢材フローリングというのです。
本来無垢が持っている、無垢材の良い点。調湿効果がどうなっているかなどは、フローリングの定義には入っていないのが現状です。
ちなみに、オイル塗装を行った無垢フローリングは、表面が硬くなり(オイルが浸透し木材内部で硬化する)、傷などがつきにくくなるなどのメリットがあります。
ささくれ防止にも効果的です。
良いところもある塗装された無垢材フローリングです。
しかし、無垢材の経年変化があり、だんだんと風合いが出てくるのが特徴です。建築した当初は無垢材のシミや汚れが気になりますが、年を重ねる事により無垢材全体の色合いが変化し、シミやキズが目立たなくなり・・・これを、風化と劣化の違いと説明しています。
③のフローリングが、弊社の使用している無垢材のフローリングです。
木の持つ性質や良さをそのまま使用する、生きたままの木材です。
3:ワックスは何のために塗るのか
塗装加工された無垢材フローリングを含め、汚れ(手垢)防止やシミ(水をはじく)防止の為に塗る方がほとんどです。
汚れない、しみないを希望すれば、調湿効果を損なうのは当然です。
呼吸し空気中の湿気を吸ったり吐いたりするからこその調湿効果。
工業製品ではない、天然の素材に対して、水ははじいて湿気は吸え!なんて無茶な話ですよね。
弊社では、10年~20年程度汚れない、しみないを希望されるのであれば、はじめから一般的によく使われている「フロ-リング」で良いと思っています。
しかしながら20年以上の年月が経過すると劣化してしまいます。
この時には表面のシ-トや板の一部が剥がれ、下部の色の違う部分が見え、とても見てられない状態になります。
又、工業製品の為10年ほどにて廃盤となってしまい部分的な補修も不可能です。
※下部の色が見えた合板フローリングと補修用に売られている木目プリントシート
一般的な「フロ-リング」は「シ-ト」若しくは「突板」にて工場生産されていて、ウレタン塗装となっています。
工業製品なので安価で手に入りますし、色やデザインもいろいろあります。
4:日本に古くからある無垢フローリング
日本は昔から板の間の文化です。
神社や仏閣、お城等の床を思い出してください。
数百年たった無垢の床はほとんどワックスなしで、雑巾がけされているだけです。
とても美しいと思いませんか?
※京都市東山区青蓮院門跡
あれこそが無垢材の持つ美しさであり、強さだと思っています。
無垢材は年月をかけることで「シミ」などは、全体の経年変化で色が変色するため目立たなくなっていきます。
これが『風化』です。
確かに入居したて、新築の時は床についた小さな傷や汚れがとても目につくかもしれません。
無垢フローリングは最初の10年~20年はシミやキズが気になりますが、その後は全体に色が変わり風合いが増します。
一般的なフローリングと異なり、金太郎あめのごとくキズを付けても下部は同じ色の木です。キズが目立ちません。
又、杉や桧等の無垢材は工業製品ではない為、何年たっても日本から無くなる事はありません。
最低でも数十年暮らし、次世代に受け継いで行ける家を建てたいからこそ、ワックスを塗らない無垢フローリングを推奨するのが弊社の答えです。
ちなみに、日本の古い建物と同じように米のとぎ汁で雑巾がけをする場合。
ワックスとは違って手間がかかりません。
ワックスは表面の色や質感がどうしても変わってしまうため、一気に塗り上げないといけませんが、雑巾がけは気が付いた時にサッサっと拭くだけ。
神経質な作業は何もなく、お家を大切に扱ってあげるだけで常にピカピカな上、いつの間にかきれいに風化した床になってくれますよ。
ちなみに、米のとぎ汁で行う雑巾がけは、昔の掃除方法と言われ、今はしないほうが良いと言われています。
その理由は、本物の無垢の床というのが現代ではほとんどないからです。
プリントされたフローリングや、加工された無垢フローリングではただ拭いただけになるので、無垢の床じゃないお家では避けてくださいね。