壁紙の素材ごとの特徴と種類
2022/12/03 | 家づくりのこと TOPICS阪神間で、お施主さんの好きなデザインを大切にした家づくりを行っている、いなほ工務店です。
最近のコラムは少しデザインから離れたものばかりだったので、今回は「壁」を彩る壁紙についてお伝えいたします。
壁紙と一言で言っても、デザインだけでなく材質は様々です。
どういった種類があるのか、各材質の特徴とメリットデメリットを施工事例や写真を元にお伝えさせていただきます。
デザインを大きく左右する内壁材
家づくりを行う際、私たちの側がまず考えるのは構造だったりプランだったり、土地をどう生かすかといった事から始まります。
でも、お施主さんの場合は違いますよね。
どんな部屋が欲しいか。部屋は何室ぐらい必要か。
家族の中でも、「私の部屋は可愛くしたい」「自分の部屋はかっこよく、インテリアを楽しめるようにしたい」等、どういったお部屋にしたいかという思いを口にすることから家づくりは始まるかと思います。
「好き」を大切にしたい弊社は、そのお施主さんの想いが非常に大切だと思っているのですが、この「どういった部屋にしたいか」を大きく左右する1つが、壁をどうするかという事です。
「壁をどうするか」と一言で言っても、内壁の施工方法にも「壁紙」「珪藻土や漆喰の塗壁」「木材」など、いくつもの方法があります。
1つ目の「壁紙」は、
デザインが豊富で漆喰壁と比べると比較的安価で施工可能です。
消臭機能や抗菌機能といった特殊機能を持った製品も多いのが魅力です。
2つ目の珪藻土や漆喰を用いた「塗壁」は、
自然素材ならではの風合いが楽しめるのが特徴です。
職人の手で仕上げられる壁は、温かみと重厚感がありナチュラルな雰囲気に仕上がります。
漆喰にはもともと消臭機能と調湿機能が備わっているので、何もしなくとも快適な空間へと近づけてくれるのが魅力です。
3つ目はの木材質は、
施工した壁板をそのまま見せる場合もあれば、薄くカットした木やコルクを用いる場合もあります。ナチュラルな雰囲気の他、金具などのアクセントを使用することで、よりカッコイイ空間に仕上げるには最適な素材です。
また、経年変化を楽しめるも魅力の1つです。
3種類の内壁材について簡単にお伝えしましたが、他にもタイルだったり、パネルだったり。
内壁材だけでも様々な種類があり、それぞれの中でもいくつもの種類に分かれるのが内壁材の特徴であり、内壁材が大きくデザインを左右する理由でもあります。
今回のコラムでは、先にお伝えしておいた通り、内壁材の中でも壁紙についてより詳しくお伝えいたしますね。
壁紙の種類
壁紙と一言で言っても、その種類の多さは他の内壁材とは一線を画します。
・ビニールクロス
・織物壁紙(布)
・珪藻土クロス
・和紙・紙クロス
・木質系クロス
ざっと上げただけでも、上記の通り。
一般的に使用頻度が高いビニールクロスは、豊富なデザインがあるのが特徴ですが、デザインだけでは表現しづらい。
紙や布、木の素材感なども、それぞれの素材を利用した壁紙なら実現可能です。
上記5種類の壁紙の特徴をお伝えさせていただきます。
ビニールクロス
ビニールクロスは、ポリ塩化ビニル(PVC)と呼ばれるプラスチック素材を主原料としたビニールシートを施工用の紙に貼り付けた壁紙です。
内壁材の中でも安価で加工しやすいのが特徴で、住宅用の壁紙としても多く用いられています。
加工のしやすさや、色やデザイン、柄が豊富にあるだけでなく、防汚機能や吸湿機能・消臭機能・耐火機能・耐水機能の他、最近ではペット対策の防キズ機能や、爪とぎ機能があるものなど、高機能な物が豊富にあります。
機能にもデザインにもあまり妥協せずに、好きなものを選べるのが特徴です。
ただし・・・プラスチック素材のため、加工時に使用される可塑剤(ビニールをやわらかくするのに使用)や安定剤(劣化をゆるやかにするために使用)が、廃棄焼却の際に有害物質を排出することが環境問題として指摘されています。
でも、環境問題に対処するために不揮発性(加熱しても気体にならない)の可塑剤を使用するなど、有害物質の発生を抑えた商品の開発も進められおり、ますます用途の幅が広がっています。
織物壁紙(布)
織物壁紙(布)は、その名の通り、レーヨンや絹、麻、フェルトなどの布を、紙で裏打ちした壁紙です。
ビニールクロスと比べるとやや高価ですが、高級感、重厚感が産まれるのが特徴です。
織り方の違いによる仕上がりも楽しむことができます。
が・・・埃を吸着しやすいという特徴があるので、定期的な掃除やメンテナンスが必要です。
珪藻土/漆喰クロス
珪藻土や漆喰のクロスは、無機質系壁紙とも呼ばれ、自然素材の土や石、セラミックやガラス繊維などを主な原料としています。
それら無機質の素材を、不燃性の上面に施して作られており、珪藻土や漆喰を塗装した壁のような味わいのある風合いや質感を壁紙で実現できるのが特徴です。
見た目だけでなく、調湿効果や消臭効果も実際の珪藻土/漆喰壁ほどではないですが期待できます。
ビニールクロスと比べると高価な壁紙ですが、防火性にも優れており、塗り壁よりリーズナブルな値段で塗り壁が実現できると人気です。
和紙/紙クロス
弊社でも非常に人気の高いのが、和紙や紙を主原料とする壁紙です。
ヨーロッパなど海外での需要が非常に高く、最近では輸入品も広く一般的に使われるようになったことから、更に色や柄が豊富になっています。
紙クロスは、輸入クロスだけでなく、日本で古くから使用されてきた和紙壁紙、ケナフや麻などの非木材紙を用いた壁紙もあります。
最近では「オガファーザー」という、壁紙の上から塗装する壁紙も非常に人気が高く、塗装の方法を変えることで、塗り壁のような雰囲気を出せるようにもなっています。
一般的にビニールクロスよりも高価ですが、和紙/紙クロスは環境によい素材なのがいいですね。
木質系クロス
薄くカットした自然の木材を紙で裏打ちした壁紙です。
木材の他、コルクを薄くスライスして紙に裏打ちしたコルクシート壁紙も、木質系クロスの1つです。
木やコルクといった自然素材だからこその暖かみが感じられ、落ち着いた印象や、カッコいい印象のお部屋が実現しやすくなります。
ビニールクロスや他の壁紙と比べるとやはり高価なのが少しネックです。
壁紙ごとのメリットデメリット
5種類の壁紙をお伝えしましたが、壁紙と言っても素材が違う分メリットデメリットも違います。
次は、先ご紹介した5種類の壁紙のメリットデメリットをご紹介いたします。
ビニールクロス
価格が安くて丈夫な上、色や柄等デザインが豊富なことから広く選ばれているビニールクロスには、環境や健康面に悪影響を与えてしまう事が懸念されることもあります。
メリット
・価格が安い
色や柄、デザインなど種類が豊富
耐久性が高い
施工がしやすい
拭き掃除可能
高機能製品も豊富にある
壁紙に求められる機能や性能、デザインの豊富さなどが使いやすい点が一通り備わった上、壁紙はもちろん、施工も他の内壁材と比べ安価にできるのが大きなメリットです。
逆にデメリットは、
カビやダニが発生しやすい
長持ちしない
環境面や健康面に悪影響が報告されている
ビニールクロスはその名の通り、ビニールでできているため通気性や調湿性がありません。
そのためカビやダニが発生しやすくなります。
また、ビニールクロスの接着剤にはホルムアルデヒドが含まれている製品もあり、それら製品を使用した場合シックハウス症候群を引き起こす等、健康面への悪影響が指摘されています。
先にもお伝えしましたが、排気焼却時にも有害物質が出てしまうため、産業廃棄物処理しなければならないといった環境面での悪影響もあります。
織物壁紙(布)
レーヨンや麻・絹・フェルトなどの布を素材とした織物壁紙のメリットには、
奥行きが感じられる見た目
経年変化が楽しめる
調湿性があるという点があります。
布クロスは編み込んだ織物を壁紙としているので、表面には実際に編み込まれた凸凹ががあり、印刷では表現できない奥行きがあります。
また、布クロスは自然素材ならではの、時間の経過とともに風合いが変化していくことを楽しむことができます。
劣化ではなく経年変化していくのが、壁紙と言えど自然素材ならではですね。
しかしデメリットが無いわけではなく、
拭き掃除ができない、高価である。
といったデメリットがあります。
織物壁紙は、普通の布と同様に汚れが落ちにくいという特徴があります。
更に、織物壁紙は布なので水も吸い込んでしまいます。
ビニールクロスのように拭き掃除はできないので、汚れには十分注意する必要があります。
珪藻土/漆喰クロス
珪藻土/漆喰クロスは、壁紙の表面に珪藻土や漆喰といった自然素材を採用しているので、調湿効果や昇給効果があります。
メリットは、
・調湿効果がある
・消臭効果がある
・天然素材の風合いを楽しめる
珪藻土/漆喰クロスの最大のメリットは、珪藻土/漆喰の特徴である調湿効果と消臭効果かと思います。
しかし・・・商品によっては風合いだけを残したものもあります。
調湿効果や消臭効果が得られる製品なのか、よく確認する必要があるので注意してみてみてくださいね。
デメリットは、こちらも織物壁紙と同じく拭き掃除ができないという点です。
自然素材であり、水を含むとシミができてしまう場合があります。
汚れたときは乾いたタオルで叩くように拭く必要があります。
これはデメリットになるのかどうか分かりませんが・・・。
珪藻土/漆喰と言っても、あくまで壁紙です。
本物の珪藻土壁や漆喰壁ほどの調湿効果、消臭効果はありません。
和紙/紙クロス
紙クロスは特におしゃれなものや印象的なものが多く、ヨーロッパやアメリカで使われることの多い壁紙です。
日本のものだと、和紙が特に人気です。
メリットとしては見た目そのまま、
・やわらかで温かい手触り
・デザインが豊富
ビニールクロスのツルっとした質感とは違い、紙クロスはやわらかで温かい手触りと質感に仕上げることができます。
また、紙クロスはヨーロッパやアメリカではメジャーな壁紙であるゆえ種類が豊富な上、日本国内の紙を見渡しても和紙から唐紙など多くのデザインから選ぶことができます。
デメリットは、紙なので
・水や油に弱い
・継ぎ目が目立ちやすい
・ビニールクロスと比べて高価という点があります。
紙クロスはもともとが紙であるため水や油に弱く、ビニールクロスのように拭き掃除ができません。
一度水や油がしみこむとシミになるなどメンテナンス性に難があるのが特徴です。
また、壁紙のつなぎ目が時間の経過に伴い膨張縮小することで、目立ってしまう事もあります。
劣化ではありませんが、つなぎ目が目立ってきたら張替えのタイミングと言われていることもあります。
木質系壁紙
木質系壁紙は天然木やコルクをスライスして作った壁紙です。
メリットは、
・手軽に木の風合いを楽しむことができる
・落ち着いた印象に仕上げられる
・調湿作用がある
木質系壁紙は、天然木やコルクの風合いを楽しめるクロスです。床に木を、壁に木質系壁紙を施工すると、よりナチュラルな雰囲気に仕上げることができます。
自然素材のため木の持つ調湿作用やリラックス効果、香りなど楽しめる製品も多くあります。
デメリット
・拭き掃除できない
・価格が高い
木質系壁紙は水を多く含むとシミになってしまうため、こちらもやはり拭き掃除はできません。
また、ビニールクロスや他のクロスと比べてみても高価です。
まとめ
以前窓のコラムの際にもお伝えしましたが、メリットしか無いものはなく、どんなものでもメリットデメリットはあります。
例えば先でもお伝えした通りビニールクロスの場合、
色や柄、デザインが豊富で、耐久性も高く、価格が安い上に拭き掃除ができるという、多くの方に選ばれるメリットが多くある半面。
長持ちしないといった製品自体のデメリットと共に、カビやダニが発生しやすく、健康面や環境面に悪影響があるという、デメリットがあります。
じゃあ、他の壁紙はどうかというと・・・。
ビニールクロス以外の、紙や布・珪藻土や木材といった自然素材を活用した壁紙は、まず拭き掃除ができません。
汚れがついても拭くことはできず、シミとなって残るというデメリットがあります。
雰囲気が良くとも、汚れやすい場所で採用するのは非常に難しいですよね。
ですが、リビングや寝室等の落ち着いた空間では、素材の持つ雰囲気や高級感、奥行きが空間のデザインを仕上げてくれるのも事実です。
どんなものでも適材適所。
この素材!と決めてしまうのではなく、この部屋はどう?この空間はどう?といったように、決めていくのが一番かと思いますし、壁紙を選ぶ楽しさも家づくりに欠かせない大切な家族の楽しみではないでしょう。
今回のコラムでは、壁紙の種類についてお伝えしましたが、また近いうちに、色やデザインの持つ力。
壁紙選びで大切な色柄や、雰囲気作りに欠かせないポイントなどをお伝えいたしますね。
※モデルハウス「伊丹市桑津 無垢の木の家 重層の甍」フリースペースより、唐紙の壁紙