無垢材と白アリとミツバチと
2021/01/15 | お家のこと 自然素材のこといなほ工務店は無垢材が大好きです。
その中でも国産材をおススメしています。
今回はその理由の1つとして、白アリのお話をお伝えしたいと思います。
白アリは世界中のどこにでもいるわけではない
皆さんは白アリの生息域をご存じですか?
実は下の生息図で分かる通り、白アリは全世界にいるわけではありません。
北米や北欧・ロシアのように寒い地域にはいないのです。
最近日本の海にいる魚の種類が変わってきたと言われるように、生息域には気温や水温などが大きく関係しています。
では次に、日本の木材(製材)の輸入先を見てみます。
データ元は、2019年財務省貿易統計です。
この図で分かる通り、1位はカナダの26%、2位はロシアの16%、3位はフィンランドの16%です。
・・・気になりませんか?この順位と数字。
実は1位から3位まで、白アリがいない国で育った木材なんです。
実に輸入製材の58%(2019年)を占めています。
その後も、4位はスウェーデン、5位はオーストリアと続くため、実に7割以上の木材が白アリのいない地域で育った製材という事実。
市場に流通している製材の約半分は輸入製材なので、約3.5割の製材が白アリのいない地域で育ったという事が分かります。
テレビ大阪の人気番組「池の水抜いてみた」でも毎度おなじみの『外来生物』。
外来生物が池に住む日本古来の生物を食べつくし、大繁殖してはいつの間にか池を支配しています。
日本古来の生き物は、『外来生物』のいないところで進化してきたのですから、対応できずに負けてしまうのは当然と言えば当然です。
これと同じように、白アリがいない地域で育った木材は、白アリの存在を知りません。
日本に当たり前のように生息する白アリ。
その中に、全く白アリを知らない木材が入ったらどうなるのか。
白アリに対する耐性が低いのは当たり前のことと言えます。
※白アリの被害にあった様子
輸入材が悪いとは言いませんが、できれば白アリのいる山で育った。
白アリと闘いながら進化した木材「国産材」をおススメする理由です。
では次に、白アリの対策についてお話します。
白アリ対策に有効なのは?
輸入材であれ、国産材であれ。
防蟻薬剤で予防処理を行っています。
この防蟻薬剤には、2種類ありいなほ工務店が行っているのが「ホウ素系」です。
この「ホウ素系」の防蟻薬剤は、揮発性が無く環境にやさしく効果が持続する、とっても優れものです。
そして、アメリカやヨーロッパでは、防蟻薬剤として認められているのは「ホウ素系」のみです。
なぜ「ホウ素系」だけなのか。
理由は、もう1つの種類「殺虫薬剤」は、合成ピレスロイド系、ネオニコチノイド系などの農薬成分が含まれているから。
胎児への影響が懸念されているうえ、持続効果も5年が目安となっているため再処理行う事が必要だからです。
そして「殺虫薬剤」が問題なのがもう1点。
これらの薬剤は、揮発することで離れた白アリへ攻撃を行う、忌避性能があります。
ネオニコチノイド系は揮発しにくく安全だと言われていますが、EUでは現在使用禁止になっているのが事実です。
高断熱住宅は特に気密性が高いため、防蟻薬剤を散布すると居住スペースもその薬剤の成分に晒される率が高くなります。
簡単に言えば防蟻薬剤が充満している家になります。
だから私たちは「ホウ素系」で白アリ処理を行っています。
そんなによく効く「ホウ素系」はなぜ大丈夫なの?
そもそも「ホウ素」は原子番号5番の元素です。
自然界には酸素と結合した「ホウ酸」として存在し、日本の温泉水にも多く含まれています。
日常生活の中では、目薬やコンタクトレンズの保存液にも含まれています。
ホウ酸は無機物で、常温では揮発蒸発をすることも無いのでアレルギーやシックハウスの原因にもなりません。
ではなぜ、人間には害がないのに、白アリやゴキブリ(ホウ酸団子で有名)駆除に効果があるのか。
その理由は、『腎臓』にあります。
哺乳類が持つ『腎臓』にはホウ酸を排出する機能があり、摂取した場合でも尿と共に排出されます。
しかし、虫には『腎臓』がありません。
『腎臓』を持たない虫が、ホウ酸を摂取した場合、細胞レベルからエネルギー代謝ができなくなり死に至るのです。
虫には有害なのに、人間には害がないのはこのためです。
もちろん、家の木材を食べようとしない虫には何の効果もありません。
ホウ酸系で処理された木材を食べようとした場合のみ効果がある。
害虫以外には本当に素晴らしい防蟻剤だと思います。
最後に、私たちが大好きな自然のお話を1つお伝えいたします。
防蟻剤とミツバチの関係性
ミツバチがどんどん減っているという話を聞いたことはありませんか?
ミツバチが減る理由の1つとして、2015年にハーバード大学が「ネオニコチノイド系農薬が原因だと特定」と発表しました。
1999年からフランスでは使用が規制され、2013年には、欧州全域で3種のネオニコチノイド系農薬の使用規制が決定されました。
日本は『ネオニコチノイド系農薬』の先進国であるため、現在も調査中のままです。
ミツバチの働きや重要性、自然環境に及ぼす影響は多々ありますが、人間社会だけを見てもミツバチがいなくなると全世界で年間20兆円の経済損失がおこると言われています。
その理由は、ミツバチが活動するだけで100種類もの農作物が実をつけることができるからです。
同じことを人間が行おうとすると・・・考えるだけでも大変ですし、自然環境が大きく変わるのは簡単に想像できます。
『ネオニコチノイド系農薬』に関しては色々な意見があるので、一概にこうとは言えませんが、他にもっと良い!それも人にも虫にも効果が高い、防蟻剤があるのですからそちらを使い続けたいなと私たちは考えています。