階段の役割とデザイン

2021/06/02 | お家のこと

上階と下階を繋ぐ役割を持つ「階段」。田舎のように土地が豊富にあり、平屋も当たり前という地域とは真逆の阪神間では、家を建てよう!と考えた時、しっかり考える必要があるのが階段です。
どんなデザインで、どのように配置するのか。
階段は上下を繋ぐための単なる移動手段、通路というだけではなく、立体的な空間をつくるものでもあります。
階段の在り方ひとつで、生活そのものが変化するというと大げさかもしれませんが、今回のコラムでは、家の顔・主役になりつつも使い勝手のいい階段デザインを、弊社の施工事例を基にご紹介したいと思います。

階段のデザインを考える前に大切なことを伝えよう!

弊社では最近特に、インスタなどのSNSにアップされているお写真を基に、「こんな階段にしたい!」と言っていただくことが増えました。
昔は本や雑誌だったことを考えると、時代の変化を感じます。
このように、ご希望を事前に伝えいただけるのは、弊社にとってとてもありがたいことです。

というのも、弊社はお客様の「好きと快適な暮らし」を基に家づくりを行っているので、好きなものや理想や希望・夢を率直に教えて頂けると、お客様にとっていい家はどんな家か見えてくるので、とても嬉しいのです。
特に階段は、絶対に事前に伝えて頂きたいことの1つです。

階段は異なる階への移動手段になり、設置スペース、構造(どう階段を持たせるか)、階高など、様々な部分との兼ね合いが出てきます。
先日アップしたコラム「玄関洗面所」のように、「こんな形にしたい!」と言われて、「できますよ!」とはなかなか言えません。
まず「そのためには・・・」となるのが階段です。

理想の階段、こんな階段が良いというこだわりをお持ちの方は、家づくりの際。
プランニングに入るとき、家を建てようと考えている会社に「こんな階段にしたい」または、「こんな階段が嫌いです」と伝えてください。
弊社では、プランニングする際にこちらからお聞きするようにしていますが、どの会社もそうとは限らないので、「階段」については事前にお伝えすることをおススメします。

「階段」とは少し違うかもしれませんが、スキップフロアの場合も絶対に事前に伝えるようにしてくださいね。

階段下をオープンにする

最初にご紹介するのは、限られた敷地である土地の形状を活かした、造作オープン階段。
南面上部に階段上の大きな開口をとり、スリット階段の合間から1階のリビングに明かりを落としています。

階段下収納はよくある収納スペース確保方法の1つですが、この階段では階段下をオープンにし、TV置きスペースとして活用しました。
使いにくいとよく言われる階段下の収納スペース。
圧迫感のないスリット階段+収納庫としての役割をやめることで、空間の奥行きがうまれ、無駄なくスペースを利用できるようになります。

ちなみにテレビ台は床下エアコンの設置場所としての役割も兼ねています。

同じくスリット階段+収納庫をやめた階段下活用に、さくらの家があります。
こちらは階段下をデスクスペースとして活用し、飾り棚のような床下エアコンのスペースも作りました。

階段下をTVスペースとして使用しだした、最初のお家「びおハウスH最初のモデルハウス」施工事例はこちら

階段下をデスクスペースにした「さくらの木の家」施工事例はこちら

階段で空間を仕切る

こちらは、まさに階段が主役と言える家。
LDKの中心、玄関から入ってすぐに階段が目に入ります。
お施主さんの「ダイニングスペースとリビングスペースを分けたい。でも、そこまでがっつりは分けたくない」というご希望から導き出した答えがこのスリット階段の形状です。
階段のおさまりをどうしようか・・・ご提案したものの・・・という難題にあたりましたが、大工さんが色々試行錯誤し、お施主さんに喜んでいただける形に出来上がりました。

この階段下には、こっそりと床下エアコンも設置しています。

スリット階段は存在感はありつつも光が抜け視界が広がるので、上下を繋ぐ階段の役目と共に、横の空間をやさしく区切る役目もできるのが特徴です。

階段で横の広がりを区切った家「LDKにスリット階段の家」施工事例はこちら

シンプルを極める

お客様から「こんな階段にしたい」とご要望をいただいた階段。
見た目がとてもシンプルでスッキリとしており、一目でおしゃれ”だなと感じる階段です。

ただし・・・写真にも写っている通り、片側に支えが一切無いため、見た目のシンプルさに反して、施工的にはとてもとても手が込んでいます。
階段は見た目以上に構造や仕様が複雑です。
話が進み確定してしまうと、変更は容易にできません。
階段を考える際は、提案されたことをしっかりイメージしてくださいね。

シンプルを極めた階段の家「特殊なグレー色左官壁の家」施工事例はこちらから

階段も廊下も1つの空間としてとらえる

印象的な2階の渡り廊下風の廊下+大きな吹き抜け+シンプルな手摺の階段で実現させた、自然光を無駄なく取り入れた施工事例です。
自然光にこだわり、とても贅沢に空間を使用しました。
廊下と階段の手摺のデザインをこだわれば、シンプルでも個性とデザイン性がしっかり出せます。

階段下は人が立ったまま入れる高さの扉を付けた収納スペースになっています。
階段下の収納スペースは、作りによっては入れたものが出しにくい。無駄なスペースになりがちです。
階段下に収納をつくる場合は、事前にどう使うか考えておくと無駄がないですよ。

空間を贅沢に使用した階段「中庭にて光を集める家」施工事例はこちら

地域環境に配慮する

一見よくある階段に見えるかもしれませんが、階段の踊り場に作った造作壁込みでこだわりの詰まった階段です。
いなほ工務店では、「土地をよく見る」「家の建つ環境をしっかり考える」と言っていますが、こちらのお家の階段は、それがよく分かる作りです。
隣地にアパートが建っており、実はこの造作壁が隣地との目隠しを兼ねています。

間接照明に見える部分は、実は間接照明ではありません。
窓を設置しているのみで、自然光が間接照明のように入るように、現場で大工さんにボードを当ててもらいながら一番きれいに光が差し込む位置を見つけました。
図面や模型ではなかなか分からない、地域の環境も現場でしっかり確認することで、正解を導き出せるのが「家を建てる」家づくりだと思います。

地域環境に配慮した階段の「兵庫県産材の2世帯住宅」施工事例はこちら

リノベーションは元を活かす

次の階段は、リノベーション住宅からご紹介。

大阪の長屋に元々あった階段を活かしつつ、合板で仕上げた階段です。
とても思い切ったデザインですが、玄関を入った瞬間から始まる。
古いものを活かしつつ、新しいデザインに生まれ変わる、リノベーションらしい階段に仕上がったと思います。

予算や構造など、実現可能なことが新築よりも少ないリノベーションの場合、建物の持っている空気を取り込んだデザインを考えるのがおススメです。

元を活かしたリノベーション住宅の階段「旭区の家」施工事例はこちら

段差を設けて程よい距離を作る

ステップフロアとまではいきませんが、段差を設けた階に、少し短めの階段と踊り場、3段のスリット階段で、光を落としつつ上下を区切りました。

階段の踊り場を廊下のように利用し、居室への出入り口を配置しています。
家族の存在が感じられる近い距離、でも段差で程よく距離を設けることで、プライベートもしっかり確保する階段の作りです。

ステップフロアのような階段デザイン「檜と船舶窓が特徴的な家」施工事例はこちら

階段を階段以外にも使用する

現在見学可能なモデルハウスでは、弊社の「やってみたい!」をいっぱい詰め込んだ階段をご覧いただけます。
壁一面の本棚と、階段下のAVボード・アイアンの手摺。
一番初めにご紹介した、スリット階段の形状に近いですが、周りの空間の使い方と壁を一面壁面収納にすることで、全く印象の違う階段になります。
本を並べお気に入りの雑貨を並べると、海外の映画にも出てくる「自宅ライブラリー」の完成です。

階段は家の中でも大きなスペースを必要とします。

階段のプランニングをしっかり行う事で、階段以外の使用方法も見えてきますよ。

デザインと快適性は共存できる

最後にご紹介する階段は、一見すると何の変哲もない階段(途中に猫用の小窓や収納が豊富に隠されていますが・・・)です。
今までご紹介してきた階段の中では、階段自体は一番普通に見えるかもしれませんが、「上りやすい」という点にこだわりました。
階段自体はもとより、階高、手摺、その周辺の木材すべてに「上りやすい」を追求しています。
階段は何度も書きますが、上下を繋ぐ重要な役割を持っています。
そしてその家で暮らし続ける限り、上り下りをし続けることになりますし、土地が高く、広さに限りのある阪神間では特に、ワンフロアーで生活することは無理があります。
だからこそ、階段をどうするか考える際は、デザインと共に性能と使いやすさもしっかりと考えてくださいね。

まとめ

デザインと性能と使い勝手。
よくデザインにこだわると使い勝手が悪くなって当たり前。
おしゃれな暮らしは不便なもの。という話を聞きますが、家づくりに携わるものとして、そんなことは無いと思います。
そして、家づくりに携わる者の責任として、カッコよければ使い勝手が悪くていいというのは、絶対に言ってはいけないことだとも思います。
家は生涯暮らし続ける場所であり、快適に安心して暮らすための場所だからこそ、デザインと性能と使い勝手は共存すべきです。

階段はキッチンやお風呂などの水回りとは違い、簡単に架け替えられるものではありません。
だからこそ、家づくりの際には、自分たちが快適だと思う階段はどういうものか、しっかりと考えて、希望を伝えることを忘れないでください。
「好き」と「快適」は人それぞれ違います。
せっかく家を建てるのですから、自分たちの「好き」と「快適」を伝えるのを忘れないでくださいね。

そして最後に、家づくりに携わるものとしてもう一個。
階段は正直何が使いやすくて使いにくいのか、イメージしにくい家のパーツでもあります。
モデルハウスを見学するなり、いくつも階段を上ってみて自分にあった階段を見つけてくださいね。

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