耐震等級と許容応力度計算について

2021/08/18 | お家のこと TOPICS

「耐震等級」は、家を建てようと考え始めた時、どういう家を建てるかの基準として最重要ポイントだと思います。
耐震等級は1~3段階に分かれており、3が一番耐震性能の高い家です。

ちなみに耐震性能1の基準は、「震度6〜7程度で倒壊しない、震度5強で損壊しない建物」です。
よく読むと分かりますが、震度6~7は倒壊しなくても、「損壊はする」レベルが耐震等級1という事が分かります。
「損壊はする」レベルがいかに怖いのかは、後でお伝えすると共に、今回のコラムでは耐震等級の計算方法と、どうやって耐震等級が決まるのかを詳しくお伝えいたします。

まずは、耐震等級がどういうものか知ろう

耐震等級とは、住宅品質確保促進法、略して品確法にそって制定された地震に対する建物の強度を示す指標の1つです。 先にも述べましたが、耐震性能によって3段階に分かれており、数字が大きければ大きいほど、建物の耐震性が高いことを表しています。

建物を建てたり買ったりする際の1つの目安とされており、建売住宅の看板やチラシ、ハウスメーカーのCMなどでも【耐震等級3】という文言をよく目にするようになりました。

等級数だけ意識されがちですが、耐震等級というのは、地震で建物が崩壊しないよう地震に対する構造体の倒壊・崩壊等のしにくさを表したものであり、等級数と共にいかに安全であるかを重要視する必要があります。

そもそも地震に強い家とは?

地震に強い家かどうか判断するためには、家の強度を確認する必要があり、以下の3つの分野を計算・検討します。

1:壁の強さ(壁量・耐力壁配置・床強度)
2:部材の強さ(柱強度・梁強度・柱接合部強度・梁接合部強度)
3:地盤・基礎の強さ(基礎強度)

確認方法も3種類あります。

1:仕様規定による建築確認
2:性能表示計算による建築確認
3:許容力度計算による建築確認

耳慣れない言葉ばかりかと思いますので、1つずつどのような確認方法なのかお伝えします。

1:仕様規定とは?

建築基準法では、2階建て以下で、かつ500m2以下の木造の住宅は「四号建築物」と呼ばれていて、構造計算の提出を必要としません。
一般的な2階建て住宅は、ほぼ「四号建築物」に当たります。

四号建築物では構造計算の提出は必要とはしませんが、設計者は計算の必要があります。
耐震性能を維持するために各部構造の仕様が規定されており、それが「仕様規定」です。
この「仕様」にそって設計すれば性能表示計算や、許容力度計算を行わずに耐震等級1の建物が建てられます。

仕様規定の中には、建築基準法で定められている最も一般的な計算方法「壁量計算」「偏心率計算」「柱引抜計算」と8つの仕様があります。
多くの会社が採用しており、2階建ての木造住宅なら、壁量計算偏心率計算、柱引抜計算と8つのだけで法律上問題ありません。

壁の量だけで、地震や台風など横の力(水平力)によって建物が壊れないかを検証する簡易的な計算方法で、計算は必要ですが、建築確認申請の際にも計算結果を提出する義務が無いのも特徴です。

法律では、木造2階建て以下かつ500㎡以下は「壁量計算」のみでOKと定められています。

2:性能表示計算とは?

壁量計算に加えて「床・屋根倍率の確認」と「床倍率に応じた横架材接合部の倍率」を検証する計算方法です。
※横架材とは、柱などの垂直材に対して、直角に渡している部材(梁や桁が代表的)。
性能表示検査では簡易検査が認められており、スパン表(梁 の断面寸法を決める早見表)等を用いて、計算を省略することができます。

長期優良住宅を建てる際、耐震等級は2以上である必要があるため、多くの木造住宅はこの計算方法で耐震等級3を導き出していると言われています。

3:許容力度計算とは?

許容力度計算とは、柱の1本・梁の1本・基礎に至るまですべての部材にかかる力を計算していく方法です。
先にお伝えしました家の強度を確認するための壁の強さ、部材の強さ、地盤・基礎の強さ。
3つの分野を全て緻密に調べることができ、住宅業界に従事している人間でもよほど専門的に行っていない限り、その中身を十分理解できている人はほとんどいないと言われているほど詳細な計算を行います。
よくある2階建の木造住宅を1棟建てるための許容応力度計算でも、最低1か月はかかり計算資料(許容応力度計算書)はA4の用紙で数百枚にもなります。

耐震等級計算方法のまとめと違い

先にも述べましたが、耐震等級2以上を取得する場合「仕様規定による計算」では設計が出来ません。
2等級以上の設計を行うには

● 品確法による性能表示計算
● 許容応力度計算

のどちらかで計算を行う必要がありますが、この計算方法にも違いがあり、性能表示計算より許容応力度による構造計算の方がより細部まで計算を行っています。

下記の表にまとめましたので、しっかり見てみてください。

耐震等級 2・3 2・3
計算方法 仕様規定(建築基準法) 性能表示計算(品確法) 許容応力度計算(建築基準法)
壁バランス 簡易計算 簡易計算+α 詳細計算
壁量計算 四分割法 四分割法 偏心率
水平構面 仕様規定 床倍率の確認 水平構面耐力の計算
柱の座屈 小径・有効細長比 小径・有効細長比 有効細長比と許容応力度以下の確認
接合部の検討 筋交い端部・N値計算 仕様規定+α 許容応力度以下の確認
横架材の検討 仕様規定 スパン表 許容応力度以下の確認
基礎の検討 仕様規定 スパン表 許容応力度以下の確認

耐震等級と許容応力度計算

耐震等級2~3を取得するためには、先にも述べた確認方法。「性能表示計算」または「許容応力度計算」を行う必要があります。
どちらの方法でも条件を満たせば2~3を取得することが可能ですが、上記表のとおりその中身はまったく違うのがお判りいただけますでしょうか。

性能表示計算の耐震等級3

『性能表示制度での耐震等級2以上では、建築基準法をベースにして、建物がより高い安全性を確保する事を目標としており、この性能表示によるチェックをすると、軸組構法による木造戸建住宅が許容応力度計算を行ったのと同様の精度で、構造の安全性をもつ事を確認したことになる』

上記文章は、「木造住宅のための構造の安定に関する基準解説書」より抜粋したものです。

ここに書かれている、「性能表示によるチェック」「許容応力度計算を行ったのと同様の精度」「確認したことになる」という言葉が気になりませんか?
性能表示計算では、細かな計算や検討を行わずとも、性能表示制度のチェック項目に沿って耐震設計を行う事で、許容応力度計算したものと同等の耐震設計が行えると言っているのです。

もう少し分かりやすく言うと、仕様に沿って設計を行えばよいという事です。
例えば、この屋根材を使った建物には、これぐらいの筋交いが必要。
この構造材を使った場合は、この間隔で、この釘を打てばこのレベルの地震に耐えることが可能。
というように、必要な耐力壁の量や強さを個別に計算せずとも、仕様に沿えばよいというのが、性能表示計算であり、仕様にそって建てれば耐震等級3。だと言い切れるのです。

許容応力度計算に必要となる、屋根材や壁材、仕上げの重さや、天井下地、壁下地、床下地、壁仕上げ、床仕上げなど細かく設定する必要が無く、時間の短縮ができるだけでなく、許容応力度計算の費用を抑えることが可能です。
耐震等級3の家を、性能表示計算で設計している会社が多いのはこれ(時間の短縮と、費用を安く抑えられる)が理由です。

なぜ、許容応力度計算にこだわるのか

理由は一つ。
同じ耐震等級3であっても、性能表示計算で建てた家よりも、許容応力度計算を行った家の方が地震に強いからです。

耐震等級3で同じような家を設計する場合、性能表示計算と許容応力度計算では、詳細な作業を必要とする許容応力度計算の方がたくさんの耐力壁を必要とする計算結果が出ます。

性能表示計算で建てた耐震等級3が、許容応力度計算と同じ量の耐力壁を必要としているなら問題は無いでしょう。
しかし実際は違います。
耐力壁一つだけを見ても、許容応力度計算よりも、常に少なくなるのが性能表示計算の現状です。

なんのために耐震等級3にするのか。
数字ではなく、命と財産を守るためだと考えれば、許容応力度計算は自ずと必須になります。

耐震等級3にこだわる理由

2016年4月に発生した熊本地震。
震度7の大地震が連続して発生したのは5年経過した今も、鮮明な記憶として残っているほど大きな被害が発生しました。


※写真は毎日新聞よりお借りしました。

震源地付近の益城町では立て続けに発生した震度7の地震に耐えきれず、多くの建物が倒壊し、多くの尊い命が犠牲となりました。

最初にお伝えした怖いことというのは、熊本地震で起きた多くの建物の倒壊です。

一度目の震度7に耐えた建物の多くは「損壊」していましたが人がとどまることができる状態でした。
そこに再度発生した震度7。
一度目の震度7ですでに損壊していた建物は、次に発生した震度7で人が避難する間もなく倒壊してしまったのです。

そんな状況でもほぼ被害が無かったか、または軽微な被害で済んだのが耐震等級3で設計された戸建て住宅です。

いつどこで巨大地震が発生するか分からない地震大国日本。
この国で木造住宅を建てる者の責任として、今できる一番安全な建て方をする必要があるのではないかと考えるのが、耐震等級3にこだわる理由です。

まとめ-安全・安心のためにできること

許容応力度計算は、壁量計算や性能表示計算と比較して、費用と時間がかかります。
少しでも節約したい、または夢を実現したい家づくりの際に、目に見えないものにお金を掛けるのは抵抗があるのはよく分かります。

でも、保険に入ったりセキュリティを取り付けたり。
安全や安心はなかなか目には見えないものですし、「必要なかったわ」という場合も多々ありますが、万が一が発生したときには「こうしておけばよかった」という大きな後悔に変わるものでもあります。
特に日々の暮らしの場である「家」の場合、安全と安心が守るのは命と財産です。

壁量計算も、性能表示計算も許容応力度計算も、家を建てる時にしか行いません。(耐震リノベーションなどは別ですが)
キッチンや水回りなどの設備は古くなったら取り換えるのは容易ですが、耐震性能は家そのものなだけに取り換えることはできません。
あとで変えられないものだからこそ、徹底して安全対策を施してほしいと思いますし、弊社では一棟一棟許容応力度計算を行い家を建てています。

耐震性能をどうするか、等級も計算方法も、家を建てる人の判断に委ねられているのが地震大国日本の現状です。
そんな現状で、少しでも安全で安心できる家を建てたいと思った方は、ぜひ家を建てようと思っている会社に聞いてみてください。
「許容応力度計算は行っていますか?計算書は見せてもらえますか?」と。

行っている会社は見せてくれますし、家づくりの流れの中。どのタイミングで許容応力度計算に入るのか教えてくれますよ。

ちなみに弊社では、1:プラン作り→2:立面を起こす→3:間取りを決める→4:断熱計算・許容応力度計算の順で行っており、断熱計算・許容応力度計算には最短でも1か月半要します。
この1か月半は省くことも短縮することも簡単に済ますこともできない、絶対に必要な時間になります。
どのタイミングで家を建てたいのか。 住み始める時期から逆算して、安全で安心できる家を建てたいと考える方は、この時間も計算に入れる必要があることを忘れないでくださいね。

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