家づくりで目にする言葉「造作」って何?
2023/02/22 | 家づくりのこと TOPICSこんにちは、いなほ工務店です。
いきなりですが先日「統一感がすごくあるなと感じるお家があるのですが、何が違うのでしょうか?」というご質問を頂戴しました。
統一感がある空間の一つとして、インテリアや全体の色見をそろえている。家具の高さが目線より低いといった点があるのですが、注文住宅の場合は「造作」が大きく生きていることもあります。
今回はそんな「造作」について詳しくお伝えさせていただきたいと思います。
造作とは?
建築の分野で造作とは、建物の内にある部材や設備、または仕上げ前の工程のことを指します。
天井や壁・床などの下地作業や、階段や建具枠、鴨居や敷居など大工の手による工事、出窓のカウンターや、作り付け家具など、現場で加工し取り付け工事が必要なものが「造作」に当たります。
造作の特徴は、建物の構造には直接かかわりが無いという点ですが、建物の使い勝手やデザイン性に大きな影響をおよぼしますし、簡単に取り換えられるものではないので、しっかりと検討した上でどういったものを採用するのか考える必要があります。
ちなみに、造作で部材に当たるのは、床やドア、階段や鴨井など。
お家や用途に合わせてオリジナルで作りつけた家具のことは、「造作家具」と言います。
その他にも、オリジナルで手作りしたキッチンは「造作キッチン」、洗面所は「造作洗面台」というように、「造作」をつけて呼ばれています。
家づくりとは関係ないと言われていますが「造作(ぞうさ)もない」という慣用句がありますよね。
この言葉は「手間や費用がかからず、面倒でなく容易なこと」という意味があります。
お家に対する「造作」とは違うらしいのですが、「(職人が)手間をかけた容易でないこと」=「造作」なのかな?と考えてしまったりもします。
どんなものが造作できるの?
正直、腕のいい職人さんの手にかかれば何でも作れますよ!と言いたいところですが、注文住宅で「造作」というと、一番思い浮かぶのは「造作家具」ではないでしょうか。
その他は、「造作洗面台」や「作り付けの棚」「造作キッチンカウンター」なども大人気ですね。
洗面ボウル、壁面タイル、鏡などすべてにこだわりを詰めた造作洗面所
でも注文住宅で「造作」が一番分かりやすいのは、階段ではないかと個人的には思っています。
段の高さや幅が暮らす人に合わせて作られるだけでなく、階段裏のスペースを使って収納庫を作ったり、段が引き出しになっていたり。
モデルハウス「無垢の木の家 重層の甍」の階段下引き出し。ぜひ、見て触って引き出してみてくださいね。
使い勝手だけでなくデザイン性にもこだわれるのは、職人の手仕事「造作」だからこそですね。
以前こだわりの階段についてコラムを書かせていただきましたので、良かったらそちらもご覧くださいね。
造作のメリット
まず最初にお伝えさせていただく必要があることとして、メリットやデメリットをお伝えする際の「造作」は、家具や設備、特に洗面所やキッチン、既製品が販売されているものに対することになります。
先にお伝えしました階段はほぼ造作一択のものですから、ここからは家具や住宅設備についてお伝えいたします。
※ほぼ一択というのは、アイアン製の階段が売っていたりするからです。
注文住宅において造作のメリットは、部屋のサイズや雰囲気にピッタリとあう家具や設備が手に入るという点です。
サイズがあっているということは、無駄なスペースを生まないということでもあるので、限られた土地に家を建てる場合、特にメリットが大きくなります。
他にも造作家具や設備には、以下のように様々なメリットがあります。
1:希望がかなえられる
自分たちが頭に思い描く理想の家具や設備はなかなかないものです。
特に使い勝手やデザイン、自身の癖や使い方を反映したものを探すのは至難の業ではないでしょうか。
その点「造作」なら、しっかりと希望を伝えることで、自分たち家族だけの家具や洗面、キッチンが手に入ります。
2:統一感のあるインテリアを実現できる
家の壁や床、タイルなどをこだわっても、ピッタリあう色味やデザインの家具や設備は見つかりません。
その点「造作」なら、床材と同じ種類の木を使って家具を作ることも、お気に入りのアンティークタイルを使用して洗面所を作ることも可能です。
特に近年はコロナの影響で新築住宅には玄関洗面所が必須になりつつあります。
玄関は入ってすぐの目に付く場所でもあるので、違和感のない。空間にマッチした造作洗面所をご希望される方が多くいらっしゃいますよ。
3:空間の有効活用が可能
いきなりですが、弊社モデルハウスの主寝室には、造作のデスクがあります。
こちらのデスクは、部屋のサイズとベッドの長さ、机の奥行と椅子を引いたときに必要となるスペースを計算して作っていますから、一切の無駄がありません。
このように、造作することで家具や設備が限りあるスペースにピッタリと収まることで、空間を無駄なく使えます。
空間を少しでも有効活用するための隙間家具、高さや幅が1㎝刻みで注文できるもの等がとても人気のようですが、家を建てる際に造作しておけば、そういった隙間の有効活用方法も考えなくてよくなりますよ。
モデルハウス「無垢の木の家 重層の甍」の主寝室に造作したデスク
4:安全性が高い
設備は「造作」にかかわらず、固定なのは当然ですが家具の場合、造作でないものは固定されていません。
「造作」家具は、置くのではなく造り付けるものが多いため、家具が壁や床に固定されており、地震で倒れてくるということがありません。
そのため、壁一面の大きな棚を作ったとしても、棚や家具が倒れてくる心配がなく安全性が高くなります。
5:家具や設備を探す手間が省ける
自分が本当に好きで家にピッタリ合った家具や設備を、自分の予算内で見つけようとするととても困難です。
その点造作なら、打ち合わせでしっかり希望を伝えることでイメージに合った家具や設備が手に入ります。
希望を伝える手間はかかりますが、売っているかどうかすらも分からない、自分の欲しいデザインの家具や設備を探し続ける手間はなくなります。
造作のデメリット
メリットを先にお伝えしましたが、もちろんデメリットもありますので、造作いいな!と思われた方は以下をしっかりご覧の上、ご検討くださいね。
1:事前に現物を見ることはできない
「造作」家具や設備は、オーダーメイドです。
そのため、ショールームや家具屋さんのように見て触って確かめることができません。
2:手間と時間がかかる
「造作」は、自分の家のためだけに一から作るもののため、市販品のようにすぐに納品してもらうことができません。
自分が望む形やイメージ、サイズも正しく伝える必要があるため、多くの中から選ぶ市販品のように短時間で注文から配送・設置まで済ませることはできません。
3:気軽に撤去や移動ができない
洗面所やキッチンは、市販品でも造作でも気軽に撤去や移動はできませんが、市販品の家具は気軽に模様替えが可能です。
しかし、「造作」家具は、収納棚やデスクなどを直接床や壁に固定するため、自分で動かしたり撤去したりすることができません。
気軽に模様替えができないため、家族のライフスタイルや家族構成をしっかり考えて依頼する必要があります。
2階フリースペースに設けた壁面いっぱいの本棚とスタディスペース
4:業者によって品質や価格が全く違う
造作だけではなく、家全体を見てもそうですが。業者によって品質や性能、価格は全く違います。
出来上がりしか確認方法が無いのが「造作」ですから、家同様、事前にしっかりと業者の力量を見極める必要があります。
まとめ
「造作」についていろいろとお伝えしてきましたが、分かりやすく言うと「造作」とはオーダーメイドです。
お店で気になる洋服を見つけたとき、「丈がもう少し長ければ」「色がもうちょっと濃い目なら」「ここがもうちょっとスッとしてればいいのに」「この形で素材はこっちだともっといいのに」なんて思い浮かぶことが無いでしょうか。
そんな時、同じデザインで丈の長い、自分にピッタリな洋服を作ってもらえるととてもうれしいですよね。
「造作」とはそういうイメージを持っていただけると良いかと思います。
ただし、そこで重要になってくるのは、「造作」を依頼する相手は実現する腕があるのか。
イメージはきっちり伝わっているのかといった点の見極めです。
品質や技術、価格を知るためにも業者が手掛けた「造作」の事例を見て触って、品質をチェックした上で価格を確認して依頼する必要があります。
※現在の物価高騰により価格は常に変動しているので常時「今」の価格を確認してくださいね。
そして、一番重要なのはしっかりと自分たちが欲しいもののイメージを固めることです。
技術力が高い、品質のよい業者に依頼したとしても、イメージやサイズが誤って伝わってしまうと、欲しいものは得られません。
具体的にイメージできるようにするためにも、施工事例やモデルハウスを見学し、高さの確認や材質の見極め、好きな形を業者に伝えられるように準備してくださいね。